forget-me-not
― あの日から、ここまで。―

今まで信じていたものが、
音を立てて崩れ落ちることがある。
当たり前だと思っていた景色が、
一瞬で姿を変えてしまうことがある。
もし、
その出来事が、
前提そのものをひっくり返してしまうほどの出来事だったのなら…。
きっと、その時は、
枠を広げ、
器を深くする時。
新しい世界を、
一からつくり直す時。
あの日から、
今日まで。
決して綺麗な歩き方ではなかったけれど。
前だけを向いて、
歩いてきたわけじゃない。
立ち止まった日も。
振り返った日も。
転んだ日も。
何度もあった。
それでも歩いて、ここまできたよ。
前を向いていても。
後ろを向いていても。
歩みを止めなかった。
ただ、それだけ。
そこからは、
何が見えますか?
ここからは、
なくしたものよりも、
変わらずに在り続けるものが見える。
目には映らなくても。
触れることはできなくても。
消えることのないものが見える。
巡る季節の中で、
ふと心に咲く景色がある。
きっと、
誰かを想う気持ちも、
そのひとつ。
忘れようとするほど、
遠ざかるものじゃない。
忘れずにいることで、
静かに咲き続ける花もある。
だから、
ここからも歩いていく。
強く。
逞しく。
しなやかに。
誰にも気づかれない場所で、
静かに根を張る雑草のように。
風が吹いても。
雨に打たれたとしても。
季節が巡るたびに、
新しい草花を咲かせていく。
痛みは、
消えることはないのかもしれない。
でも…。
その痛みがあったから、
今の私がいる。
その痛みがあったから、
見える景色がある。
その痛みがあったから、
咲く花がある。
「あったから」は、
いつしか、
私だけの「宝」になる。
だから私は、
その草花を束ねることを選ぶ。
悲しみではなく。
優しさとして。
痛みではなく。
ぬくもりとして。
誰かの暮らしに、
そっと咲く草花になるように。
会えない誰かを、
ふと想う日も。
何気ない日常の中でも。
私はこれからも、
その草花を束ね、
届け続けていく。
だから、
見ていて。
忘れなかったからこそ、
咲く花がある。
∗atelier eni 178∗
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