「名前という針」
―名前が教えてくれる方向―
名前って、不思議だなと思います。
生まれたとき、自分では選んでいないのに、
いつのまにか
ずっと一緒に生きていくことになる。
呼ばれるたび、書くたび、
少しずつ、
その音や形が身体に馴染んでいきます。
私はよく、
「氏名は使命で、指名されているのかもしれない」
と思ったりもします。
昔からなんとなく、そんな感覚はありました。
でも最近になって、
それが少しずつ言葉になってきました。
名前は、
刺繍でいうなら、
たぶん「針」みたいな存在。
それ自体が主役ではないけれど、
なければ何も始まらない。
糸を通して、布に触れて、
模様を生むための、最初の道具。
私の名前には、
「綾」という字が使われています。
まっすぐではない糸が交差して、
模様をつくる、という意味があるそうです。
少し斜めに走る糸。
絡まり合う糸。
重なり合って、ひとつの表情になる糸。
その意味を知ったとき、
なんだか少しだけ
自分の人生と重なりました。
∗atelier eni∗ という名前は、
もともと
「エニシ(縁)」
という言葉から生まれました。
人と人が出会うこと。
巡り合うこと。
つながっていくこと。
そんな意味を持つ言葉です。
そこから
eni という形になり、
あとになって気づきました。
en = 縁
i = 私
縁と、私。
そんな意味も、
この名前の中に自然と重なっていたのです。
∗atelier eni∗ という名前は、
作品の名前であると同時に、
私が生きていく場所の名前でもあります。
∗atelier eni∗ の世界では、
完成された答えを並べるのではなく、
迷ったり、考え直したり、
つくりながら育てていくことを大切にしています。
ほどけてもいい。
歪んでもいい。
その途中の模様ごと、大切にしていたいのです。
名前は、未来を決めるものではない。
でも、
どんなふうに生きていくかの“方向”くらいは、
そっと教えてくれる気がしています。
私はきっと、
名を前にして
進んでいく人なのだと思います。
今日も私は、
この名前という針を持って、
自分の物語を
ひと針ずつ、縫っている。
完成しなくてもいい。
途中のままでいい。
その途中にこそ、
ちゃんと意味があると思うから。
∗atelier eni∗ は、私の居場所。
そしていつか、
あなたにとっても
居心地のいい場所になれたら嬉しいです。

∗atelier eni 137∗
