「未完成の月」
― 揺らぎの中で咲く―
未完成の光
夜空の片隅で、
まぁるくなりきれない月が、
そっと光をこぼしていた。
満ちきらないその姿は、
どこか私に似ていて、
欠けたままのやわらかさで
静かに夜を抱いていた。
その光は、
誰かを照らすためではなく、
私の中にそっと宿っている。
闇が私色に変わる時、
私はようやく、
自分の輪郭を思い出した。
私という色
完璧じゃなくていい。
まっすぐじゃなくていい。
迷っても、立ち止まっても、
私は私のペースで、
私の香りで、
私の色に咲く。
誰かの真似をしなくても、
何かになろうとしなくても、
ここに在ること自体が、
すでにひとつの答えなのだと、
月の光が教えてくれる。
揺らぎの奥で
光と影のあいだを
たゆたうように、
作品も、私も、
いつも少し揺れている。
けれど、その揺らぎの奥には、
確かな命の鼓動がある。
滲む色が、
やさしさに変わる瞬間。
未完成のままだからこそ、
見える景色がある。
十三夜の祈り
十三夜の月は、
満ちきる少し手前の光。
完成ではなく、
“これから”を抱えた月。
まだ途中であること。
まだ伸びしろがあること。
その余白こそが、
私を生かしている。
いま揺れている何かがあるのなら――
その揺らぎのままでいい。
そこに、
咲こうとする力があるから。
それでも、咲いている
欠けたままの月が
夜を美しく照らすように、
まだ満ちきらない私は今日も、
∗atelier eni∗ の世界のどこかで、
静かに花を咲かせている。

∗atelier eni 98∗

