「花を咲かせるように」
― ∗atelier eni∗の立体刺繍と、わたしたちの話―

∗atelier eni∗ の立体刺繍には、
いくつもの工程があります。
デザインを考えて、
ワイヤーで骨組みを作り、
糸を重ね、
縁を縫い、
布から切り離し、
立体へと咲かせていく…。
でも時々、
その工程は、
人が「自分らしく咲くまで」に
少し似ているなと思うことがあります。
まず最初にあるのは、
「どんなふうに咲きたいか」
という小さな想像。

Design Work(デザインワーク)
まだ輪郭も曖昧なまま、
こんなふうになれたらいいなと、
静かに夢を見る時間。
そこから、
刺繍枠に布を張るように、
ピンと背筋を伸ばして、
覚悟を決める。
たるまないように。
歪まないように。
自分の土台を整えていく時間。

そして、
Wire Work(ワイヤーワーク)。
見えない部分の骨組みを作る工程。
どんな形で立ち上がるのか、
どこに強さを持たせるのか。
人もきっと、
見えない部分で
何度も骨組みを作っているのだと思います。
折れないように。
崩れないように。

それから、
Stitch Work(ステッチワーク)。
ひと針ずつ、
糸を重ねていく。
色を重ねていく。
経験だったり、
失敗だったり、
喜びだったり。
いろんな色を纏いながら、
少しずつ厚みと深さを持っていく時間。

Edge Work(エッジワーク)。
解けないように、
ワイヤーを固定するように、
縁にステッチを施していきます。
輪郭を描くように。
それは、
自分と世界との境界線を
そっと見つけていく時間にも似ています。
何でも受け入れるのではなく、
何も拒むのでもなく。
大切なものを抱えながら、
自分のカタチを知っていくように。

けれど、
刺繍はずっと、
枠の中に張られています。
平面の中に固定されたまま。
まるで、
「こうあるべき」
という枠の中にいるみたいに。
でも、
∗atelier eni∗ の刺繍は、
そこから外れていきます。
枠から解放され、
布から切り離され、
自由になっていく。

Cut Work(カットワーク)。
平面だった花が、
立ち上がる瞬間。
最初は少し怖い。
けれど、
枠の外へ出たからこそ、
花びらは自由に揺れ、
角度を変え、
自分らしい形を作れるようになる。

そして最後に、
Bloom Work(ブルームワーク)。
咲かせる工程。
閉じていた花びらを開き、
向きを整え、
その花だけの表情を作っていく。
きゅっと閉じれば、
蕾のように。
ふわりと広げれば、
満開のように。
花びらを重ねるように整えれば、
八重咲きのようにも咲いていく。
どんな咲き方でもいい。
その日の気分や、
纏う人の感覚で、
自由に形を変えていける。
人もきっと、
同じなのだと思います。
いつも満開でいなくてもいい。
閉じこもる季節があってもいいし、
ゆっくり咲く時があってもいい。
少し不格好でも、
揺らいでいても、
その時の自分らしく咲けたなら、
それだけで美しく、
きっとそれが、
本当はいちばん美しいのだと思うのです。

そして、
∗atelier eni∗ の花は、
アクセサリーとしてだけではなく、
暮らしの中にも咲いていきます。
耳元や胸元で、
そっと誰かに寄り添う日。
外したあと、
一輪挿しや棚の上で、
静かに景色の一部になる日。
身につけるためだけに、
閉じ込めなくてもいい。
決められた役割だけに、
縛られなくてもいい。
咲く場所も、
咲き方も、
ひとつじゃなくていい。
人も、
暮らしも、
きっと同じ。
「こうでなければ」に
自分を押し込めなくても、
もっと自由でいいのかもしれません。
∗atelier eni∗ の立体刺繍は、
そんな想いを重ねながら、
ひとつずつ咲かせています。

∗atelier eni 158∗
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