「花が生まれるまで」
― 糸と光が紡ぐ、小さな魔法―
はじまりのデザイン
一輪の花が咲くまでには、
長い旅があります。
デザインから始まり、
ワイヤーワーク、刺繍、カットワーク、
そして仕立てへ…
どの工程も愛おしいけれど、
なかでも心が震えるのは
カットワークの瞬間。
針の跡が並ぶ平面が、
ふわり、ひらりと立ち上がり、
命を宿すように形を変える。
まるで眠っていた花が
息を吹き返すようで、
胸の奥に小さな灯りがともります。
――「ここから、新しい章が始まる」と。
布の声に耳を澄ませて
布は光を受けて透けるような
オーガンジー。
ときに柔らかなリネンや
温もりを抱くフェルト。
触れた指先から、
静かなぬくもりが伝わってくる。
糸が選ぶ色と祈り
糸は、花の息づかいを決める
大切な存在。
光を抱くような艶、
霞のようにやわらかな色、
野に咲く花のように凛とした彩り。
どれも“咲かせたい想い”に
導かれて選ばれます。
光と影のあいだに
光と影が織りなす奥行き、
風に揺れるような透け感、
針の軌跡に宿る温度。
立体刺繍は、
静けさの中で生まれる小さな魔法。
糸に宿る物語
ひとつの作品には、
長い時間と物語が糸で書き留められています。
その積み重ねが、
やがて“ひとつのカタチ”となって咲き、
誰かの心にそっと寄り添う花となる。
魔法のような手仕事
だから私は今日も、
糸を手にして、
静かに魔法をかけます。
立体刺繍は、
命を吹き込むような仕事。
そして私は――
もしかしたら、
本当に少しだけ魔法使いなのかもしれません…

左側は仕立てまで終わった作品。右側はカットワーク後。布から離れて、自由になったパーツたち。
ワイヤーで形作れる様になると、刺していた時の平面と印象がまるで変わります。
ふわり・ひらりと…
∗atelier eni 14∗

