「秋の扉」
風は少し冷えて、
遠くの音が澄んでいる。
闇の花が散り、
縁の花が芽吹いたあと、
世界は
静かな余白を取り戻していた。
色づいた葉が、
音もなく舞い落ちる。
その影を、
私はただ見送っていた。
手のひらの上で、
いくつもの季節が重なり、
形を変えていくのを
確かめるように…。
失ったものの奥で、
まだ残っているものが
かすかに息をしていた。
光は強くなく、
影もまた、
拒まれることはなかった。
私は、
この巡りの中に立ち、
抗うこともなく、
ただ、身を委ねていた。
それは、
胸の奥に
静かに灯るもの…。
まだ小さく、
確かな——
そんな秋のはじまり。

∗atelier eni 90∗

