「綻(ほころ)ぶ花」
―深い夜の闇の中で ―
闇の底
行くのが難しいほどの
闇の中に、
私はいました。
音も、温度も、名前もない。
それでも、
世界は動き続ける…
私も
止まったようで、
止まっていない。
静けさの奥で、
やさしい脈のようなものが
流れていました。
沈黙の庭
闇は、
怖くはありませんでした。
初めてではなかったから。
光を拒むわけでも、
求めるわけでもない。
ただ、在る。
冷たさを感じるほどの暗闇は、
痛みを感じられて、
それが
ちょうど良いとさえ感じられた頃…
見えない土の中で、
ひとつの花が
静かに膨らんでいく。
誰も知らない花。
まだ名前を持たないまま、
時間の層をくぐり抜けていました。
闇の花
光を拒まないけれど、
自ら光を求めない。
生ではなく、
永遠という
静かな時間に生きている。
闇の中でこそ、
光を知っている。
花びらがそっと、
綻(ほころ)ぶ。
音もなく、静かに…
その瞬間、
世界の輪郭が
少しだけやわらかくなる。
私という影
その花を見つめながら、
私は自分の影を見ていました。
動けなかった日々も、
声を失った夜も、
全部この花の根になっていました。
止まっているように見えても、
確かに、
ここに根付いている。
触れてはいけないほどの美しさ
闇の花が、
ふわりと開く。
音もなく、
世界を包むように…
その姿は、
どんな光の花よりも美しかった。
胸の奥が静かに揺れる。
それは喜びではなく、
ただ、
美しさに触れてしまった痛み。
幸せを感じることが
許されなかった夜に、
それでも心が動いてしまったのです。
それは、
闇の中にだけ咲く、
触れてはいけないほどの美しさでした。
そして、
私の心も少し
綻(ほころ)んだのです。

∗atelier eni 81∗

