「嵐の庭で」
― 崩壊の音を聴く―
崩れゆく世界
風が唸り、
空が軋んでいた。
ひとつの世界が、
音を立てて崩れていく。
稲光が闇を裂き、
雨は、
涙と見分けのつかないほど
激しく降り続けた。
私はただ、
そこに立ち尽くしていた。
何も言えず、
何も掴めず、
崩れていく音だけを、
確かに聞いていた。
それは、
私の外側で起こっている
どこか他の世界のようでもあり、
同時に、
心の奥で静かに
崩壊していく音でもあった。
――世界が、形を失っていく。
根の祈り
地面はぬかるみ、
根の深い木々さえ、
激しい風に身をしならせていた。
その姿は、
祈りのようでもあり、
絶望のようでもあった。
私は両手で顔を覆いながら、
ただ、
何かが遠ざかっていくのを感じていた。
光と闇の境目が曖昧になり、
生と死の距離が、
ふと消えた…
生まれる気配
それでも私は、息をしていました。
呼吸が痛みと混ざって、
身体の奥で重く響いていました。
世界の終わりのような
その嵐の中で、
確かに
――何かが生まれていました。
それは、
音にもならないほど
小さな鼓動。
けれど、
確かに何かの気配でした。
壊れることと、生まれることは、
いつも隣り合わせにあるのだと、
その夜、
私は知りました。
闇の花の蕾
嵐はやがて静まり、
濡れた土の上に、
たったひとつ、
まだ名もない花の蕾が
残っていました。
そしてその蕾は、
これから咲く
“闇の花”の最初の鼓動を、
静かに宿していたのです。
――この夜の向こうに、
痛みの種が眠っている…

∗atelier eni 73∗

