「闇に根付く花」
―祈りが芽吹く場所―
沈む音
2024年、雨の続く頃…
世界が静かに沈んでいく音を、
私は確かに聞いていました。
すべてが一瞬で形を失い、
心の奥の景色までも
色をなくしていく…
それでも、
泣くことも
立ち止まることも
許されなかった。
ただ、
目の前の現実をこなしながら、
見えない闇の中で
今やるべきことを
淡々と…
祈りの種
あの頃、
私は針を握っていました。
この世界のどこかに
何かを残したかったのかもしれません。
何も守れなかった手のひらで、
それでも、
確かなものを縫いとめたかった…
それは光を掴むためではなく、
ただ
「存在」を留めたかったから。
闇の中でしか見えない祈りを、
そっと布に埋め込んでいました。
沈黙の庭
季節は確かに巡っていたはずなのに、
その風を感じる余裕もありませんでした。
日々は嵐のように過ぎ去り、
静寂だけがあとに残りました。
けれど、
その沈黙の中で、
∗atelier eni∗ の花たちは、
確かに息をしていました。
悲しみを抱えたままでも
咲ける花。
それが、
私に残された唯一の希望でした。
根付くもの
痛みは、
もう新しいものではありませんでした。
幾度も喪失を重ね、
そのたびに心の奥で
小さな種を蒔いてきました。
知っていたのです。
それでも、
闇の底にも
根は張れることを…
だから私は、
針を置かなかった。
それだけが、
絶望の中でも
微かに感じられる
“感覚”だったから…
闇に宿る祈り
今、あの頃の私に言えることがあるとしたら――
花は陽の下だけで咲くものじゃない。
闇を知るからこそ、光を抱ける。
その証が、∗atelier eni∗ の世界。
この場所に咲く花たちは、
私の闇のかけらを抱いたまま、
それでも誰かの胸の奥で
静かに灯り続けている。
誰かの元で、
咲き続けている。
そして今もなお、
あの夜に蒔かれた小さな種が、
私の針先で、
そっと息をしているのです。

∗atelier eni 71∗

