「風の通り道」
―芽吹きの痛み―
光を集める枝
季節は、
緑が最も濃くなる頃でした。
∗atelier eni∗ は、
まるで陽を追いかける蔦のように、
日ごとに枝を伸ばし、
仲間という名の葉を、
静かに増やしていきました。
作品は人の手を渡り、
光の粒を集めながら、
いつしか、
私の知らないところで咲いていました。
それがどんなに
嬉しかったか…
風の中心に立つ
あれほど引きこもっていた日々が、
まるで嘘のように感じられるほど、
私はいつの間にか、
人の輪の中に立っていました。
笑っていました。
けれど、
その笑顔の奥には、
誰にも見せることのできない影が、
確かに存在していたのです。
光と影。
どちらが本当の自分なのか、
分からなくなるほどに、
世界はあまりにも
眩しく感じられました。
芽吹きの痛み
制約だらけの現実の中で、
それでも制作は、
楽しくて仕方のないものでした。
時間に追われ、
息つく間もない日々の中で、
私はまるで光合成をするように、
痛みを希望へと
変えていたのかもしれません。
けれど、
芽が地表に顔を出すとき、
それは、いつだって痛みを伴います。
土を押し上げ、殻を破り、
初めて風に触れるその瞬間――
私は、自分の内側で、
何かが軋む音を、
確かに聞いていました。
風の通り道
それでも私は、
分かっていました。
この痛みこそが、
光へと伸びていく証であることを。
この揺らぎこそが、
まだ生きている証なのだということを。
揺れない根の下で、
確かに、風が通り抜けていました。
その風の行く先に、
まだ見ぬ季節の扉が、
静かに、
しかし確かに
光っていたのです。

∗atelier eni 69∗

