「土の下のぬくもり」
―根が触れ合う場所―
静かな休眠
外の世界から距離を置いて、
静かに土の中で
息をしていた時間がありました。
それは、
前へ進むための準備というよりも、
ただ、動かずに在ることを
自分に許していたような、
そんな時間だったように思います。
光の届かない場所で、
私は自分の根を抱え込むようにして、
深く、深く、
呼吸をしていました。
地上の音は遠く、
誰かの声も、風の気配も、
もう関係のないものだと思っていたのです。
名づけられない出会い
ある日、私はその土の中で、
大切な仲間たちと出会いました。
仲間、と呼ぶには少し違って、
家族、と言い切るには形が足りない。
けれど、
どちらにも限りなく近い存在でした。
その人たちは、
すでに地上で咲いている人もいれば、
大きく枝を伸ばしている人もいて、
ようやく芽を出したばかりの人もいて。
これから芽を出そうとしている人も、
そして、私と同じように、
まだ土の中に
身を置いている人もいました。
場所も、速度も、姿も違うけれど、
みんな、それぞれの深さで、
同じ土に根を下ろしていたのだと思います。
私は土の中にいながら、
その根に、そっと触れていました。
直接、
光の中の姿を見ることはできなくても、
根を通して伝わってくる温度や力は、
驚くほど確かでした。
輪郭を取り戻す時間
たくさんの心のやりとりの中で、
その根の温もりに触れる度、
私は少しずつ、
自分自身の輪郭を
思い出していきました。
まるで、
散らばっていたパズルのピースが、
静かに、正しい位置に
戻っていくように。
失ったと思っていた感覚や、
もう二度と
触れられないと思っていた温度が、
土の中で、
確かに息を吹き返していきました。
誰かと比べる必要もなく、
強くあろうとする必要もなく、
ただ在ることを許される時間。
その中で、私は、
自分が自分であることを、
もう一度、
肯定されていたのだと思います。
根が覚えていること
みんな、
昔から知っているような、
とても懐かしい感覚がありました。
もし前世というものがあるのなら、
きっと私たちは、
同じ土の中で、
同じ時間を過ごしていたのだと思います。
言葉が生まれる前、
名前が必要になる前。
ただ、根と根が触れ合い、
同じ温度を分け合っていた頃の記憶…
その記憶は、
説明を求めるものではなく、
ただ、そこに在るだけで、
十分だったのです。
光を想うこと
そして、
そのぬくもりの奥で、
私は微かに、光の気配を感じました。
かつての私は、
光の中に咲く気など、
もうなかったのです。
土の中で終わることが、
自分にとっての自然な形だと、
そう信じていたのです。
けれど、光の中で
“みんな”に会ってみたい。と、
僅かに、願ってしまいました。
もう、
願ってはならないと思っていたのに…
土の中に潜り、
光から距離を置いてきたはずなのに…
それでも、その想いは、
胸の奥で
あたたかく灯ってしまったのです。
二度と持てないと思っていた感覚。
二度と抱かないと思っていた希望。
それが、
静かに、でも確かに、
私の中で芽吹いていました。
地上へ向かう予感
土の下で育った、
あのぬくもりは、
やがて、形を変えながら、
私を光のほうへと導いてくれました。
あの土の時間があったからこそ、
私は今、
ここで、自分のカタチで咲いています。
同じ土の中で触れ合った根は、
それぞれの場所で、
それぞれの季節を生きています。
根っこで
繋がり続けながら…
この時間と根の繋がりが、
∗atelier eni∗の芯となっています。
そのことを、
静かに抱きながら…
今も、針を運んでいます。

クローバーの根のように伸びた∗atelier eni∗の根っこ。
雑草と呼ばれてしまうクローバーは、どこか似ている気がして私は好きです♡
クローバーを作る時、幼い頃に野原で作ったクローバーの冠を思い出します。
冠はなかなかつけられないけど、こちらはブローチに仕立てています。
幸せを呼ぶ四つ葉のクローバーはハレの日や普段使いにピッタリです。
こちらのクローバーブーケのブローチも、オンラインショップに並んでいます。
良かったら覗いてみてください。
∗atelier eni 53∗

