「marché」
― 陽の下に咲く、小さなアトリエ ―
八ヶ岳の麓から
八ヶ岳のアトリエを飛び出して、
たくさんの荷物を車に積み込み、
時々“marché”へ出かけます。
草の香りの混じる風、
遠くの鳥の声、
朝露に光る世界の中で、
∗atelier eni∗の草花たちは、
そっと陽の下に咲きます。
風と光のなかで
タープを張り、空気を整え、
小さな世界を
一日限りの庭のように広げていく。
けれど、
風のある日は少し心配になります。
∗atelier eni∗のアクセサリーは
軽やかで繊細だから、
風が吹くたびに、
まるで羽を持った小鳥のように揺れるのです。
それでも、
その光の中で透ける姿は、
この世界が生きている証のように思えます。
出会いというご褒美
marchéの空気には、
やわらかな魔法が漂っています。
作り手たちが想いを持ち寄り、
風のように優しさが行き交う場所。
そして何より、
足を止め、
手に取ってくださる方とのひとときが、
私にとってかけがえのないご褒美です。
その方の指先に、
光が宿る瞬間。
作品が、
“誰かの時間”へと受け継がれていく瞬間。
その一つひとつの出会いが、
∗atelier eni∗の花を咲かせてくれます。
特別な空間で
野外でのmarchéとはまた違う、
お洒落なショップの店内やホテルのロビーでの出店もあります。
光の質も、音の響きもまるで違う特別な空気の中で、
∗atelier eni∗の草花たちは、
少し背伸びをしたように、しっとりと咲いてくれます。
空間が変わると、作品の表情も変わる。
それがまた、次の色や形を思いつかせてくれるのです。
光の下の世界づくり
いつも準備はぎりぎりで、
片付けは一番最後。
けれど私は、
∗atelier eni∗の世界を丁寧に咲かせたくて、
草花を一輪ずつ並べるように空間を整えます。
風の色、光の角度、人の流れ。
そのすべてが、
作品に新しい命を吹き込むのです。
風の庭の記憶
場所が変わるたび、
草花たちは新しい表情を見せてくれます。
光に透けるオーガンジーの花、
影に浮かぶ刺繍の模様。
そのひとつひとつが、
∗atelier eni∗の旅の記憶として、
静かに心に刻まれていきます。
今日もまた、
八ヶ岳の麓からmarchéへ。
世界のどこかで、
∗atelier eni∗の草花たちが
誰かの手のひらに光を結び、
そっと微笑みを咲かせていますように。
アトリエから生まれた草花たちの
“もうひとつの庭”。
オンラインの小さな庭も覗いてみてください。
あなたのもとで咲く一輪が、
そっと見つかるかもしれません。

∗atelier eni 33∗

