「裏側にある、美しい景色」
―目に見えないところに、光は宿る ―
表と裏
刺繍には、
いつも“裏側”があります。
糸を引くたび、
布の裏で結ばれる小さな結び目。
それは誰の目にも触れないけれど、
確かに作品を支えてくれる存在。
私は、その見えない場所にこそ
“本当の美しさ”があると思っています。
裏まで美しく
表が輝くためには、
裏が整っていなければならない。
ひと針ごとに糸の流れを確かめながら、
裏もまたひとつの“景色”として仕上げていく。
その瞬間、
作品はようやく“息をする”。
だから私は、
裏まで美しく、
裏まで愛せるように――
いつも祈るように
針を動かしています。
表裏一体の世界
作品の裏側は、
まるで人の心のよう。
見えないけれど、
確かに“本質”を支える場所。
糸の迷いや重なり、
ほどけそうな結び目さえも、
私にとっては
“生きている証”のように愛おしい。
表と裏は、決して切り離せない。
どちらもあって、
はじめて“ひとつの花”が咲くのです。
光の裏側
作品をひっくり返すたび、
そこには光の通り道のような
糸の影が見えます。
表からでは見えない物語が、
静かに息づいている。
私は思うのです。
光はいつも、
裏側からやってくるのかもしれないと。

ブルースターの裏側の風景。
表からは、あまり見えないけれど、お花のガクを刺繍しています。
裏側の景色も、気に入っていただけます様に…
∗atelier eni 25∗

