「祈りの静寂」
―有明月(ありあけづき)―
夜明けの残光
夜の名残りを胸に、
朝の光とともに、
ゆっくりと溶けていく月。
有明月は、
夜と朝のあいだに浮かび、
闇がすべて去りきる前に、
そっと姿をあらわします。
役目を終えた光が、
それでもなお、
世界を見守るように残る月。
主張せず、
輝きを誇ることもなく、
「照らしきったあとの静けさ」を
そのまま空に置いていく…。
境界にある月
有明月が浮かぶのは、
終わりと始まりが
ゆるやかに溶け合う時間。
眠りから覚める前の、
まだ夢の名残りが残る心と、
新しい一日の光が
重なり合う、
その境目…。
どちらにも属さず、
どちらも拒まない。
有明月は、
境界に在ることを選んだ月。
還る色
ひとつ、またひとつと、
木々の葉が光を手放していきます。
紅や琥珀のひとひらが、
風に乗って、空へと還る。
舞い落ちるその姿は、
終わりではなく、
次の季節へと託す約束。
散ることで、
土を育て、
眠る芽を守るように…。
何かを失う一方で、
その先でしか
出会えない景色があることを、
私たちは季節から学んでいくのです。
祈りの静寂
満ち欠けを繰り返した月が、
やさしい余白を残すように、
私は、静けさの中に
小さな光を見つけました。
手放すたび、
その光は澄み、
強くなるのではなく、
静かに、深くなる。
それは消える光ではなく、
あるべき場所へ
還っていく光。
夜が朝に溶けるように、
役目を終えた想いもまた、
次の時間へと
静かに引き渡されていきます。
祈りの循環
∗atelier eni∗ の世界もまた、
そんな祈りの循環の中で
息づいています。
光と影のあいだで、
迷い、手放し、
それでもなお、
新しい色を
ひとつずつ育てながら…。
満ちきらなくていい。
欠けたままでもいい。
有明月のように、
残された光が、
誰かの朝を
やさしく照らすこともあるから…。

手編みのリーフベレー×iroha brooch。
∗atelier eni 106∗
