「光を追いかけて」
―影の中で息づくもの―
光の呼吸
芽が顔を出してからの毎日は、
まるで光の匂いを探す旅のようでした。
朝の光は金色で、
午後はやわらかく、
夕暮れは、
どこか懐かしい影を落とした。
私は、
その光の移ろいに導かれるようにして、
花たちを生み出していきました。
それは仕事でも夢でもなく、
呼吸のようなもの。
世界も現実も
何も変わらないままなのに…
空気を写す
小さな花々を通して、
∗atelier eni∗ の空気を
写真というカタチで
誰かに届けたくなりました。
でも “空気” を写す方法なんて
知らなかった。
だから、
私は光と影のあわいを追いかけた。
木漏れ日の中で、影が揺れ、
花びらの奥で光が跳ねる…
その瞬間こそが、
∗atelier eni∗ の世界の“息”でした。
光と影は、いつも寄り添っていて、
まるでお互いを映し合うようで…
その瞬間を切り取りたくて
なれないカメラのシャッターを
夢中で切りました。
夜の針仕事
昼は光を追いかけ、
夜は針を持つ。
針の音が、
闇を静かに縫い合わせていく…
私はもう、
どこにいても“作って”いました。
花びらを重ねるたびに、
目には見えない祈りが形になっていく。
作れない時間にも
∗atelier eni∗の世界が広がっていく。
時間は足りなかったけれど、
焦りよりも、
静かな確信がありました。
この手の中にある小さな世界が、
ようやく外の世界に触れていく――
そんな予感がしていたのです。
眠れない夜の帳(とばり)も
底なしの闇ではなくなっていきました。
光と影の共鳴
∗atelier eni∗ の世界が満ちていくほど、
現実の世界は
少しずつ静まり返っていきました。
また違う色の違和感を抱きながら…
けれど私は、恐れなかった。
光が強ければ、影もまた深くなる。
そのことを知っていたからかもしれません。
光と影。
その両方を抱きしめて、
私はようやく
“生きている”と感じられたのです。
土の中で芽吹いたひとつの願いが、
光に向かって伸びていく。
その姿は、まだ頼りないけれど――
その時確かに、
感じられたのです。

∗atelier eni 60∗

