「∗atelier eni∗の作り手物語」
― ひと針に宿る、私の小さな物語 ―
光と影の手
八ヶ岳の風が運ぶ光と影の間に、
そっと物語を紡ぐ手。
花の記憶、朝露の光、遠い日の色を、
糸の先にすくい上げるように――。
それが、∗atelier eni∗の作り手である
「私」です。
日々と針の往復
私は、3人のコビトさん達のmamaとして、
にぎやかで温かい毎日を過ごしながらも、
静かな針の時間に戻ってきます。
その「往復」こそが、
今の私の生活のリズムです。
外の世界や現代的なものが
少し苦手な私ですが、
パソコンやカメラも少しずつ学びながら、
∗atelier eni∗らしい空気を映せるよう、
静かな挑戦を続けています。
揺れる時間の先で
そんな私は、
長くアパレル販売の現場で、
人とお洋服を繋ぐ仕事を
させていただいておりました。
出産をきっかけに
ベビー・キッズの小物製作へと
歩みを変えました。
しかし、悲しい出来事から、
仕事道具のミシンを踏めなくなり、
世の中では病が流行り、
引きこもる様に暮らす時間が長くなりました。
八ヶ岳で見つけた静寂
そんなとき、
八ヶ岳の麓に移り住みました。
ここでは、言葉になる前の空気や、
まだ気づけなかった感情さえも、
そっと抱きしめてくれるようでした。
針と糸だけに意識を向ける静かな時間の中で、
閉じていた心の蓋が少しずつ開き、
凍っていた時間が少しずつ溶けていきました。
立体刺繍との出会い
暗闇の中で立ち止まっていた私を
ひっそりと支えてくれたのは、
お花屋さんに並ぶ色とりどりの花、
身近に咲く小さな花たちでした。
その柔らかな光や色に救われた経験が、
今も心に残っています。
その想いが重なり合い、
「誰かに寄り添える、身につけられるお花」を作りたい——
そんな願いから、
∗atelier eni∗の世界が生まれました。
失った光をもう一度取り戻すように、
沈黙を破って生まれた世界。
それは今から6年ほど前のこと。
まだ∗atelier eni∗の世界が形になる前、
私だけの小さな創造の旅路です。

∗atelier eni 2∗

